幸田文・著(平凡社)
自分では、なんて表現したらいいのかわからないふとした感情を、
すとんと腹落ちする表現で言語化してくれる。
『崩れ』を
読んだ時から、この方の文章のトリコだ。
『老いの身じたく』では、おばあさんの誰にともなくつぶやいたひとことを耳にしたその時の状況を、
”(前略)至極自然に言葉になって口を出たのだろうし、私のほうはそれこそ全く、思いもかけぬ不意のうちに、ただ耳があったがために聞こえて聞いた、ということである。”
と記されていた。
その状況が目に浮かぶようだ。
すごい文章力。
思わず備忘録として記してしまうほど。