『新版 思考の整理学』 [日常]

2024-03-24T14:37:17.jpg
外山滋比古・著(ちくま文庫)

童話『桃太郎』には諸説ある。
流れてきた桃を食べたおじいさんおばあさんが若返って、桃太郎を授かった、というのは有名な説。
桃は若返りの効果、不老長寿の象徴のイメージと、女性を想起するキーワードでもあるから、なるほどなー。と思ってた。

今の形に落ち着いたのは、どうも江戸時代に、子どもたちに「どうして若返ったら赤ちゃんができたの?」と聞かれて困った当時の大人たちが「桃から桃太郎が」と話したのだと、ネットに書いてあった。(ほんとかな?)

ところが、この本では「インブリーディング」を戒める教訓を含んでいるように思う、と違う角度から分析されていた。
そういえば、昔は家督とか、家名とかの理由で近親結婚が繰り返されてきた歴史がある。
そのためか、後継ぎができず養子縁組をすることは一般的だったように思う。由緒正しいおうちとかお武家さんとか。
このおじいさん、おばあさんもそのインブリーディングの弊害を受けていたという仮定。

「河を流れてきた桃というのは、縁もゆかりもない”流れものの女”である」

なんと!

「”流れ者の女”などとしては人々に受け入れられない。それで河を流れてきた桃とした」
そして、その桃から健やかな桃太郎が生まれるというのは、優生学上の知識を具体例で示したことであるにすぎない、と論じている。

うーん。(私にとっては)新解釈!

驚きはまだ続く。
それを読んで、私はてっきり、その流れてきた女をおばあさんが内助の功として、おじいさんにすすめたのかと思った。
昔話のおじいさんって、たぶん年齢は4.50代だろうし。
すると著者は、その女を息子に娶せたとしている。

息子いる設定なの? その可能性を考えたことなかった!

「(あわれをとどめるのは、桃太郎の父親である。どこにも姿をあらわさない。おじいさんは、いるにはいるが、山へしば刈に追いやられて、嫁えらびには口が出せない)。」

それも新解釈!!(私的に)

「昔の人たちがインブリーディングの害にいかに深くむしばまれていたかの証拠である」
とあるので、これはおじいさんおばあさんだけの問題ではなく、親類縁者が固まっている集落だから、息子に村のどの家から嫁を貰っても子どもができない(できにくい)ということだろう。

著者としては、ここだけをクローズアップして紹介されるのは不本意だと思う。
単に知識の偏りだけではいけないよ、という事例のひとつとして紹介されている。
本当は、若者へ新しい頭の使い方について書かれた本だ。

ただ私が、在来野菜の「種」について考えているから、
読了後の今現在、この一部分が刺さったということ。

読み手のその場その時に刺さる一文。それは人によって違うのだ。
そこに気づけるのが読書の醍醐味。と、私は思う。


タイトルに則り、自分なりに「思考を整理」してみた。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:moblog

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。